沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り県は20日、沖縄防衛局が国土交通相に埋め立て承認撤回の取り消しの審査を請求したことを受け、防衛局に反論する意見書を国交省に発送した。県は大浦湾側で新たに見つかった軟弱地盤の改良のため打ち込む砂杭(すなぐい)に必要な砂の量が、県内の年間の砂利の採取量の3~5年分にあたる650万立方メートルであることを問題視。当初計画で想定しなかった大量の砂の調達や国内で実績がない深さ最大90メートルの地盤改良は当初5年とされていた埋め立て工期が長期化し、新基地建設が米軍普天間飛行場の固定化を意味するとし、埋め立て承認撤回の適法性を主張している。
県の意見書は沖縄防衛局が国交省に提出した調査会社作成の軟弱地盤の改良の報告書を元に、複数の問題を指摘している。
報告書は軟弱地盤の強化や埋め立て地の液状化を防ぐために砂杭を全体で約7万7千本打ち込む内容。当初の計画は埋め立て全体の土砂は東京ドーム16・6杯分に相当する約2062万立方メートルだが、新たな地盤改良のために追加で東京ドームの約5・2個分の650万立方メートルの砂が必要と試算している。
県内の年間砂利採取量は2016年が約180万立方メートル、15年約140万立方メートルで、地盤改良に必要な砂は県内採取量の数年分にあたる。意見書をまとめ21日に県庁で会見した県側代理人の松永和宏弁護士は「(防衛局は埋め立てのため)58万立方メートルの砂を沖縄本島周辺から購入するとしていたが、いったい650万立方メートルをどう調達するのか」と指摘。意見書も「(改良に)どれだけの年数を要すのかまったく分からない」としている。
また、意見書は埋め立て承認時の計画では大浦湾側を含めた全域で護岸の整備に着手し5年で埋め立てを完成する予定だったが、承認後に軟弱地盤の問題が発覚したため大浦湾の護岸整備に着工できていないことも強調。会見に同席した加藤裕弁護士は「見切り発車で承認を申請し、大浦湾を無視したため工事が進まない。普天間の危険性除去のための辺野古(新基地建設)という適正さを失っている」と国の対応を批判した。