抜粋
中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)について
平成25年12月17日 国家安全保障会議決定 閣議決定
平成26年度から平成30年度までを対象とする中期防衛力整備計画について、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成25年12月17日国家安全保障会議及び閣議決定)に従い、別紙のとおり定める。
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(別紙)
中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)
Ⅰ 計画の方針
平成26年度から平成30年度までの防衛力整備に当たっては、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成25年12月17日国家安全保障会議及び閣議決定。以下「25大綱」という。)に従い、特に重視すべき機能・能力についての全体最適を図るとともに、多様な活動を統合運用によりシームレスかつ状況に臨機に対応して機動的に行い得る実効的な防衛力として統合機動防衛力を構築する。同時に、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、高度な技術力と情報・指揮通信能力に支えられ、ハード及びソフト両面における即応性、持続性、強靱性及び連接性も重視した防衛力とする。このため、自衛隊の体制強化に当たっては、想定される各種事態への対応について、自衛隊全体の機能・能力に着目した統合運用の観点からの能力評価等を踏まえ、総合的に導き出した特に重視すべき機能・能力の整備を優先し、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備する。
以上を踏まえ、以下を計画の基本として、防衛力の整備、維持及び運用を効果的かつ効率的に行うこととする。
1 各種事態における実効的な抑止及び対処並びにアジア太平洋地域の安定
化及びグローバルな安全保障環境の改善といった防衛力の役割にシームレスかつ機動的に対応し得るよう、統合機能の更なる充実に留意しつつ、特に、警戒監視能力、情報機能、輸送能力及び指揮統制・情報通信能力のほか、島嶼部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応、宇宙空間及びサイバー空間における対応、大規模災害等への対応並びに国際平和協力活動(国連平和維持活動、人道支援・災害救援等の非伝統的安全保障問題への対応を始め、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動をいう。以下同じ。)等への対応のための機能・能力を重視する。また、これらの機能・能力の効果的な発揮のための基盤の着実な整備を図る。
2 その際、南西地域の防衛態勢の強化を始め、各種事態における実効的な抑
止及び対処を実現するための前提となる海上優勢及び航空優勢の確実な維持に向けた防衛力の整備を優先することとし、機動展開能力の整備も重視する。
一方、主に冷戦期に想定されていた大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持・継承に必要な範囲に限り保持することとし、より一層の効率化・合理化を徹底する。
3 (略)
4 (略)
5 (略)
6 (略)
Ⅱ 基幹部隊の見直し等
1 陸上自衛隊については、我が国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、
統合運用の下、作戦基本部隊(機動師団・機動旅団・機甲師団及び師団・旅団)や各種部隊等の迅速・柔軟な全国的運用を可能とするため、各方面総監部の指揮・管理機能を効率化・合理化するとともに、一部の方面総監部の機能を見直し、陸上総隊を新編する。その際、中央即応集団を廃止し、その隷下部隊を陸上総隊に編入する。
島嶼部に対する攻撃を始めとする各種事態に即応し、実効的かつ機動的に対処し得るよう、2個師団及び2個旅団について、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする2個機動師団及び2個機動旅団に改編する。また、沿岸監視部隊や初動を担任する警備部隊の新編等により、南西地域の島嶼部の部隊の態勢を強化する。島嶼への侵攻があった場合、速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備するため、連隊規模の複数の水陸両用作戦専門部隊等から構成される水陸機動団を新編する。
また、大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻のような侵略事態への備えのより一層の効率化・合理化を徹底しつつ、迅速かつ柔軟な運用を可能とする観点から、新たに導入する機動戦闘車を装備する部隊の順次新編と北海道及び九州以外に所在する作戦基本部隊が装備する戦車の廃止に向けた事業を着実に進めるとともに、九州に所在する戦車について、新編する西部方面隊直轄の戦車部隊に集約する。また、北海道以外に所在する作戦基本部隊が装備する火砲について、新編する各方面隊直轄の特科部隊への集約に向けた事業を着実に進める。
2 海上自衛隊については、常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察(ISR)
活動(以下「常続監視」という。)や対潜戦等の各種作戦の効果的な遂行により、周辺海域を防衛し、海上交通の安全を確保するとともに、国際平和協力活動等を機動的に実施し得るよう、1隻のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)と2隻のイージス・システム搭載護衛艦(DDG)を中心として構成される4個の護衛隊群に加え、その他の護衛艦から構成される5個の護衛隊を保持する。また、潜水艦増勢のために必要な措置を引き続き講ずる。
3 航空自衛隊については、南西地域における防空態勢の充実のため、那覇基
地に戦闘機部隊1個飛行隊を移動させる。また、警戒航空部隊に1個飛行隊を新編し、那覇基地に配備する。
我が国の防空能力の相対的低下を回避し、航空優勢を確実に維持できるよう、高度な戦術技量の一層効果的な向上のため、訓練支援機能を有する部隊を統合する。
4 陸上自衛隊の計画期間末の編成定数については、おおむね15万9千人
程度、常備自衛官定数についてはおおむね15万1千人程度、即応予備自衛官員数についてはおおむね8千人程度を目途とする。また、海上自衛隊及び航空自衛隊の計画期間中の常備自衛官定数については、平成25年度末の水準を目途とする。
Ⅲ 自衛隊の能力等に関する主要事業
1 各種事態における実効的な抑止及び対処
(1)周辺海空域における安全確保
広域において常続監視を行い、各種兆候を早期に察知する態勢を強化するため、イージス・システム搭載護衛艦(DDG)、汎用護衛艦(DD)、潜水艦、固定翼哨戒機(P-1)及び哨戒ヘリコプター(SH-60K)の整備並びに既存の護衛艦、潜水艦、固定翼哨戒機(P-3C)及び哨戒ヘリコプター(SH-60J)の延命を行うほか、哨戒機能を有する艦載型無人機について検討の上、必要な措置を講ずる。また、護衛艦部隊の増勢に向け、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦を導入する。さらに、新たな早期警戒管制機又は早期警戒機のほか、固定式警戒管制レーダーを整備するとともに、引き続き、現有の早期警戒管制機(E-767)の改善を行う。加えて、広域における常続監視能力の強化のための共同の部隊の新編に向け、滞空型無人機を新たに導入する。このほか、海上自衛隊及び航空自衛隊が担う陸上配備の航空救難機能の航空自衛隊への一元化に向けた体制整備に着手する。
(2)島嶼部に対する攻撃への対応
(ア)常続監視体制の整備
平素からの常続監視に必要な体制を整備し、各種事態発生時の迅速な対処を可能とするため、与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配備する。また、現有の早期警戒管制機(E-767)及び早期警戒機(E-2C)の運用状況等を踏まえ、前記(1)に示すとおり、新たな早期警戒管制機又は早期警戒機を整備するほか、前記Ⅱ3に示すとおり、警戒航空部隊に早期警戒機(E-2C)から構成される1個飛行隊を新編し、那覇基地に配備するとともに、移動式警戒管制レーダーの展開基盤を南西地域の島嶼部に整備することにより、隙のない警戒監視態勢を保持する。
(イ)航空優勢の獲得・維持
巡航ミサイル対処能力を含む防空能力の総合的な向上を図るため、前記Ⅱ3に示すとおり、那覇基地における戦闘機部隊を1個飛行隊から2個飛行隊に増勢するほか、戦闘機(F-35A)の整備、戦闘機(F-15)の近代化改修、戦闘機(F-2)の空対空能力及びネットワーク機能の向上を引き続き推進するとともに、近代化改修に適さない戦闘機(F-15)について、能力の高い戦闘機に代替するための検討を行い、必要な措置を講ずる。また、中距離地対空誘導弾を引き続き整備するとともに、巡航ミサイルや航空機への対処と弾道ミサイル防衛の双方に対応可能な新たな能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3 MSE)を搭載するため、地対空誘導弾ペトリオットの更なる能力向上を図る。さらに、新たな空中給油・輸送機を整備するとともに、輸送機(C-130H)への空中給油機能の付加及び救難ヘリコプター(UH-60J)の整備を引き続き進める。なお、太平洋側の島嶼部における防空態勢の在り方についても検討を行う。
(ウ)海上優勢の獲得・維持
常続監視や対潜戦等の各種作戦の効果的な遂行により、周辺海域を防衛し、海上交通の安全を確保するため、前記(1)に示すとおり、イージス・システム搭載護衛艦(DDG)、汎用護衛艦(DD)、潜水艦、固定翼哨戒機(P-1)及び哨戒ヘリコプター(SH-60K)の整備並びに既存の護衛艦、潜水艦、固定翼哨戒機(P-3C)及び哨戒ヘリコプター(SH-60J)の延命を行うほか、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦を導入する。また、護衛艦部隊が事態に応じた活動を持続的に行うために必要な多用途ヘリコプター(艦載型)を新たに導入するとともに、掃海艦、救難飛行艇(US-2)及び地対艦誘導弾を引き続き整備する。
(エ)迅速な展開・対処能力の向上
迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保し、実効的な対処能力の向上を図るため、輸送機(C-2)及び輸送ヘリコプター(CH-47JA)を引き続き整備する。また、前記(ウ)に示す多用途ヘリコプター(艦載型)のほか、輸送ヘリコプター(CH-47JA)の輸送能力を巡航速度や航続距離等の観点から補完・強化し得るティルト・ローター機を新たに導入する。さらに、現有の多用途ヘリコプター(UH-1J)の後継となる新たな多用途ヘリコプターの在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。こうした航空輸送力の整備に当たっては、役割分担を明確にし、機能の重複の回避を図る。
海上から島嶼等に部隊を上陸させるための水陸両用車の整備や現有の輸送艦の改修等により、輸送・展開能力等を強化する。また、水陸両用作戦等における指揮統制・大規模輸送・航空運用能力を兼ね備えた多機能艦艇の在り方について検討の上、結論を得る。さらに、自衛隊の輸送力と連携して大規模輸送を効率的に実施できるよう、民間事業者の資金や知見を利用する手法や予備自衛官の活用も含め、民間輸送力の積極的な活用について検討の上、必要な措置を講ずる。
前記Ⅱ1に示す機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団・機動旅団)に、航空機等での輸送に適した機動戦闘車を導入し、各種事態に即応する即応機動連隊を新編するとともに、南西地域の島嶼部に初動を担任する警備部隊を新編等するほか、島嶼部への迅速な部隊展開に向けた機動展開訓練を実施する。また、精密誘導爆弾の誘導能力及び地対艦誘導弾を整備するとともに、艦対艦誘導弾について、射程の延伸を始めとする能力向上のための開発を推進する。
(オ)指揮統制・情報通信体制の整備
統合機能の充実の観点から、全国の部隊を機動的に運用し、島嶼部を始めとする所要の地域に迅速に集中できる指揮統制体制を確立するため、各自衛隊の主要司令部に所要の陸・海・空の自衛官を相互に配置し、それぞれの知見及び経験の活用を可能とするとともに、前記Ⅱ1に示すとおり、各方面総監部の指揮・管理機能を効率化・合理化するとともに、一部の方面総監部の機能を見直し、陸上総隊の新編を進める。
全国的運用を支えるための前提となる情報通信能力について、島嶼部における基盤通信網を強化するため、自衛隊専用回線を与那国島まで延伸するとともに、那覇基地に移動式多重通信装置を新たに配備する。また、各自衛隊間のデータリンク機能の充実や野外通信システムの能力向上を図るほか、引き続き、防衛分野での宇宙利用を促進し、高機能なXバンド衛星通信網を整備するとともに、当該通信網の一層の充実の必要性について検討の上、必要な措置を講ずる。
(3)弾道ミサイル攻撃への対応
北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上を踏まえ、我が国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図る。
弾道ミサイル攻撃に対し、我が国全体を多層的かつ持続的に防護する体制の強化に向け、イージス・システム搭載護衛艦(DDG)を整備するとともに、引き続き、現有のイージス・システム搭載護衛艦(DDG)の能力向上を行う。また、前記(2)(イ)に示すとおり、巡航ミサイルや航空機への対処と弾道ミサイル防衛の双方に対応可能な新たな能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3 MSE)を搭載するため、地対空誘導弾ペトリオットの更なる能力向上を図る。さらに、弾道ミサイルの探知・追尾能力を強化するため、自動警戒管制システムの能力向上や固定式警戒管制レーダー(FPS-7)の整備及び能力向上を推進する。
弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA)に関する日米共同開発を引き続き推進するとともに、その生産・配備段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずる。また、日米共同の弾道ミサイル対処態勢の実効性向上のため共同訓練・演習を行うほか、弾道ミサイル対処の際の展開基盤の確保に努める。
弾道ミサイル防衛用の新たな装備品も含め、将来の弾道ミサイル防衛システム全体の在り方についての検討を行う。また、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力の強化のため、我が国自身の抑止・対処能力の強化を図るよう、弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる。
(略)
(4)宇宙空間及びサイバー空間における対応
(ア)宇宙利用の推進
(略)
(イ)サイバー攻撃への対応
(略)
(5)大規模災害等への対応
南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害や原子力災害を始めとする特殊災害といった各種の災害に際しては、十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開して初動対応に万全を期すとともに、統合運用を基本としつつ、要員のローテーション態勢を整備することで、長期間にわたる対処態勢の持続を可能とする。その際、発災の初期段階における航空機等を活用した空中からの被害情報の収集や迅速な救助活動が人命を保護する上で死活的に重要であり、また、道路啓開等の速やかな応急復旧活動の実施が民間による円滑な救援物資の輸送等に不可欠であるといった東日本大震災の教訓を十分に踏まえるものとする。また、関係府省、地方公共団体及び民間部門と緊密に連携・協力しつつ、各種の訓練・演習の実施や計画の策定、被災時の代替機能や展開基盤の確保等の各種施策を推進する。
(6)情報機能の強化
(略)
2 アジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善
(略)
3 防衛力の能力発揮のための基盤
(1)訓練・演習
各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、自衛隊の統合訓練・演習や日米の共同訓練・演習を計画的かつ目に見える形で実施するとともに、これらの訓練・演習の教訓等を踏まえ、事態に対処するための各種計画を不断に検証し、見直しを行う。その際、全国の部隊による北海道の良好な訓練環境の活用を拡大し、効果的な訓練・演習を行うほか、輸送艦や民間輸送力の積極的な活用や部隊の機動性の向上を進め、北海道に所在する練度を高めた部隊の全国への展開を可能とする。また、自衛隊の演習場等に制約がある南西地域における効果的な訓練・演習の実現のため、地元との関係に留意しつつ、米軍施設・区域の自衛隊による共同使用の拡大を図る。このほか、国内外において米海兵隊を始めとする米軍との共同訓練に積極的に取り組み、本格的な水陸両用作戦能力の速やかな整備に努める。
各種事態に国として一体的に対応し得るよう、警察、消防、海上保安庁等の関係機関との連携を強化するとともに、国民保護を含め、各種事態のシミュレーションや総合的な訓練・演習を平素から計画的に実施する。
(2)運用基盤
各種事態発生時に迅速に展開・対処するとともに、対処態勢を長期間にわたり持続させる上で、駐屯地・基地等が不可欠の基盤となることを踏まえ、駐屯地・基地等の抗たん性を高める。特に、滑走路や情報通信基盤の維持、燃料の安定的供給の確保を始めとして、駐屯地・基地等の各種支援機能を迅速に復旧させる能力を強化する。また、各種事態発生時に民間空港・港湾の自衛隊による速やかな使用を可能とするため、特に、南西地域における展開基盤の確保に留意しつつ、各種施策を推進する。さらに、即応性を確保するため、所要の弾薬や補用部品等を運用上最適な場所に保管するとともに、駐屯地・基地等の近傍等において必要な宿舎の着実な整備を進める。このほか、対処態勢の長期にわたる持続を可能とする観点から、隊員の家族に配慮した各種の家族支援施策を推進する。装備品の可動率をより低コストかつ高水準で維持できるよう、装備品の可動率の向上を阻む原因に係る調査を行うとともに、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う新たな契約方式(PBL:Performance Based Logistics)について、より長期の契約が予見可能性を増大させ、費用対効果の向上につながることを踏まえつつ、その活用の拡大を図る。
(3)人事教育
(略)
(4)衛生
(略)
(5)防衛生産・技術基盤
(略)
(6)装備品の効率的な取得
(略)
(7)研究開発
厳しい財政事情の下、費用対効果を踏まえつつ、自衛隊の運用に係るニーズに合致した研究開発を優先的に実施する。
防空能力の向上のため、陸上自衛隊の中距離地対空誘導弾と航空自衛隊の地対空誘導弾ペトリオットの能力を代替することも視野に入れ、将来地対空誘導弾の技術的検討を進めるほか、将来戦闘機に関し、国際共同開発の可能性も含め、戦闘機(F-2)の退役時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図るため、実証研究を含む戦略的な検討を推進し、必要な措置を講ずる。また、警戒監視能力の向上のため、電波情報収集機の開発のほか、新たな固定式警戒管制レーダーや複数のソーナーの同時並行的な利用により探知能力を向上させたソーナーの研究を推進する。加えて、大規模災害を含む各種事態発生時に柔軟な運用が可能な無人装備等の研究を行うほか、車両、艦船及び航空機といった既存装備品の能力向上に関する研究開発を推進する。
(略)
(8)地域コミュニティーとの連携
各種事態発生時の実効的な対処や自衛官の募集・再就職支援等における地方公共団体等との緊密な連携の重要性を踏まえ、防衛施設とその周辺地域とのより一層の調和を図るため、引き続き、防衛施設周辺対策事業を推進するとともに、防衛省・自衛隊の政策や活動に関する積極的な広報等により、地方公共団体や地元住民の理解及び協力の獲得に努める。
地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊の救難機等による急患輸送が地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配置・運営に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮する。その際、中小企業者に関する国等の契約の方針を踏まえ、効率性にも配慮しつつ、地元中小企業の受注機会の確保を図るなど、地元経済に寄与する各種施策を推進する。
(9)情報発信の強化
(略)
(10)知的基盤の強化
(略)
(11)防衛省改革の推進
(略)
Ⅳ 日米同盟の強化のための施策
1 日米防衛協力の強化
米国の我が国及びアジア太平洋地域に対するコミットメントを維持・強化し、我が国の安全を確保するため、我が国自身の能力を強化することを前提として、「日米防衛協力のための指針」の見直しを進める。
同時に、共同訓練・演習、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動及び米軍・自衛隊の施設・区域の共同使用の拡大を推進するほか、弾道ミサイル防衛、計画検討作業、拡大抑止協議等の各種の運用協力や政策調整を一層緊密に進める。
また、海賊対処、能力構築支援、人道支援・災害救援、平和維持、テロ対策等の分野における協力のほか、海洋・宇宙・サイバー分野における協力を強化する。
さらに、情報協力及び情報保全の取組、装備・技術面での協力等の幅広い分野で日米の協力関係を強化・拡大する。
2 在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするための取組
在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするとの観点から、在日米軍駐留経費を安定的に確保する。
Ⅴ 整備規模
前記Ⅲに示す装備品のうち、主要なものの具体的整備規模は、別表のとおりとする。おおむね10年程度で25大綱の別表の体制を構築することを目指し、本計画期間においては、現下の状況に即応するための防衛力を着実に整備することとする。
Ⅵ 所要経費
1 この計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、平成25年度
価格でおおむね24兆6,700億円程度を目途とする。
2 本計画期間中、国の他の諸施策との調和を図りつつ、調達改革等を通じ、
一層の効率化・合理化を徹底した防衛力整備に努め、おおむね7,000億円程度の実質的な財源の確保を図り、本計画の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、おおむね23兆9,700億円程度の枠内とする。
3 この計画については、3年後には、その時点における国際情勢、情報通信
技術を始めとする技術的水準の動向、財政事情等内外諸情勢を勘案し、必要に応じ見直しを行う。
Ⅶ 留意事項
米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図るための在日米軍の兵力態勢見直し等についての具体的措置及びSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関連事業については、着実に実施する。
別表
区分 |
種類 |
整備規模 |
陸上自衛隊 |
機動戦闘車 装甲車 水陸両用車 ティルト・ローター機 輸送ヘリコプター(CH-47JA) 地対艦誘導弾 中距離地対空誘導弾 戦車 火砲(迫撃砲を除く。) |
99両 24両 52両 17機 6機 9個中隊 5個中隊 44両 31両 |
海上自衛隊 |
護衛艦 (イージス・システム搭載護衛艦) 潜水艦 その他 自衛艦建造計 (トン数) 固定翼哨戒機(P-1) 哨戒ヘリコプター(SH-60K) 多用途ヘリコプター(艦載型) |
5隻 (2隻) 5隻 5隻 15隻 (約5.2万トン) 23機 23機 9機 |
航空自衛隊 |
新早期警戒(管制)機 戦闘機(F-35A) 戦闘機(F-15)近代化改修 新空中給油・輸送機 輸送機(C-2) 地対空誘導弾ペトリオットの能力向上 (PAC-3MSE) |
4機 28機 26機 3機 10機 2個群及び教育所要 |
共同の部隊 |
滞空型無人機 |
3機 |
注:哨戒機能を有する艦載無人機については、上記の哨戒ヘリコプター(SH−60K)の機数の範囲内で、追加的な整備を行い得るものとする。