平成26年度以降に係る防衛計画の大綱(抜粋)

平成25年12月17日

国家安全保障会議決定 

閣議決定       

策定の趣旨

   (略)

我が国を取り巻く安全保障環境

 1 (略)

   国家間では、地域紛争が引き続き発生していることに加え、領土や主

  権、海洋における経済権益等をめぐり、純然たる平時でも有事でもない

  事態、いわばグレーゾーンの事態が、増加する傾向にある。

   (略)

 2 我が国周辺を含むアジア太平洋地域においては、安全保障上の課題等

  の解決のため、国家間の協力関係の充実・強化が図られており、特に非

  伝統的安全保障分野を中心に、問題解決に向けた具体的かつ実践的な協

  力・連携の進展が見られる。他方、領土や主権、海洋における経済権益

  等をめぐるグレーゾーンの事態が長期化する傾向が生じており、これら

  がより重大な事態に転じる可能性が懸念されている。

   (略)

   中国は、地域と世界においてより協調的な形で積極的な役割を果たす

  ことが強く期待されている一方、継続的に高い水準で国防費を増加させ、

  軍事力を広範かつ急速に強化している。また、中国は、その一環として、

  周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での他国の

  軍事活動を阻害する非対称的な軍事能力の強化に取り組んでいると見

  られる。他方、中国は、このような軍事力の強化の目的や目標を明確に

  しておらず、軍事や安全保障に関する透明性が十分確保されていない。

   また、中国は、東シナ海や南シナ海を始めとする海空域等における活

  動を急速に拡大・活発化させている。特に、海洋における利害が対立す

  る問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試み等、高圧的とも言

  える対応を示しており、我が国周辺海空域において、我が国領海への断

  続的な侵入や我が国領空の侵犯等を行うとともに、独自の主張に基づく

  「東シナ海防空識別区」の設定といった公海上空の飛行の自由を妨げる

  ような動きを含む、不測の事態を招きかねない危険な行為を引き起こし

  ている。

   これに加えて、中国は、軍の艦艇や航空機による太平洋への進出を常

  態化させ、我が国の北方を含む形で活動領域を一層拡大するなど、より

  前方の海空域における活動を拡大・活発化させている。

   こうした中国の軍事動向等については、我が国として強く懸念してお

  り、今後も強い関心を持って注視していく必要がある。また、地域・国

  際社会の安全保障上も懸念されるところとなっている。

   (略)

   米国は、安全保障を含む戦略の重点をよりアジア太平洋地域に置くと

  の方針(アジア太平洋地域へのリバランス)を明確にし、財政面を始め

  とする様々な制約がある中でも、地域の安定・成長のため、同盟国との

  関係の強化や友好国との協力の拡大を図りつつ、地域への関与、プレゼ

  ンスの維持・強化を進めている。また、この地域における力を背景とし

  た現状変更の試みに対しても、同盟国、友好国等と連携しつつ、これを

  阻止する姿勢を明確にしている。

 3 (略)

   また、我が国は、自然災害が多発することに加え、都市部に産業・人

  口・情報基盤が集中するとともに、沿岸部に原子力発電所等の重要施設

  が多数存在しているという安全保障上の脆弱性を抱えている。東日本大

  震災のような大規模震災が発生した場合、極めて甚大な被害が生じ、そ

  の影響は、国内はもとより国際社会にも波及し得る。今後、南海トラフ

  巨大地震や首都直下型地震が発生する可能性があり、大規模災害等への

  対処に万全を期す必要性が増している。

 4 (略)

我が国の防衛の基本方針

 1 基本方針

   (略)

 2 我が国自身の努力

   (略)

 (1)総合的な防衛体制の構築

   (略)

 (2)我が国の防衛力 - 統合機動防衛力の構築

    防衛力は我が国の安全保障の最終的な担保であり、我が国に直接脅

   威が及ぶことを未然に防止し、脅威が及ぶ場合にはこれを排除すると

   いう我が国の意思と能力を表すものである。

   (略)

    また、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、平素

   の活動に加え、グレーゾーンの事態を含め、自衛隊の対応が求められ

   る事態が増加しており、かつ、そのような事態における対応も長期化

   しつつある。このため、平素から、常時継続的な情報収集・警戒監視・

   偵察(ISR)活動(以下「常続監視」という。)を行うとともに、事

   態の推移に応じ、訓練・演習を戦略的に実施し、また、安全保障環境

   に即した部隊配置と部隊の機動展開を含む対処態勢の構築を迅速に行

   うことにより、我が国の防衛意思と高い能力を示し、事態の深刻化を

   防止する。また、各種事態が発生した場合には、事態に応じ、必要な

   海上優勢及び航空優勢を確保して実効的に対処し、被害を最小化する

   ことが、国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜く上で重要で

   ある。

   (略)

 3 日米同盟の強化

   (略)

 (1)日米同盟の抑止力及び対処力の強化

   (略) 

    一層厳しさを増す安全保障環境に対応するため、西太平洋

   における日米のプレゼンスを高めつつ、グレーゾーンの事態における

   協力を含め、平素から各種事態までのシームレスな協力態勢を構築す

   る。

    そのため、共同訓練・演習、共同の情報収集・警戒監視・偵察(I

   SR)活動及び米軍・自衛隊の施設・区域の共同使用の拡大を引き続

   き推進するとともに、弾道ミサイル防衛、計画検討作業、拡大抑止協

   議等、事態対処や中長期的な戦略を含め、各種の運用協力及び政策調

   整を一層緊密に推進する。

   (略)

 4 安全保障協力の積極的な推進

 (1)アジア太平洋地域における協力

   (略)

    中国の動向は地域の安全保障に大きな影響を与え得るため、相互理

   解の観点から、同国との安全保障対話や交流を推進するとともに、不

   測の事態を防止・回避するための信頼醸成措置の構築を進めていく。

   なお、同国による我が国周辺海空域等における活動の急速な拡大・活

   発化に関しては、冷静かつ毅然として対応していく。

   (略)

 (2)国際社会との協力

   (略)

防衛力の在り方

 1 防衛力の役割

   (略) 

 (1)各種事態における実効的な抑止及び対処

   (略)

   ア 周辺海空域における安全確保

     平素から我が国周辺を広域にわたり常続監視するとともに、領空

    侵犯に対して即時適切な措置を講じる。また、グレーゾーンの事態

    も含め、我が国の主権を侵害し得る行為に対して実効的かつ機動的

    に対応するとともに、当該行為が長期化・深刻化した場合にも、事

    態の推移に応じシームレスに対応し、我が国周辺海空域の防衛及び

    安全確保に万全を期す。

   イ 島嶼部に対する攻撃への対応

     島嶼部に対する攻撃に対しては、安全保障環境に即して配置され

    た部隊に加え、侵攻阻止に必要な部隊を速やかに機動展開し、海上

    優勢及び航空優勢を確保しつつ、侵略を阻止・排除し、島嶼への侵

    攻があった場合には、これを奪回する。その際、弾道ミサイル、巡

    航ミサイル等による攻撃に対して的確に対応する。

   ウ 弾道ミサイル攻撃への対応

     (略)

   エ 宇宙空間及びサイバー空間における対応

     (略)

   オ 大規模災害等への対応

     大規模災害等の発生に際しては、所要の部隊を迅速に輸送・展開

    し、初動対応に万全を期すとともに、必要に応じ、対処態勢を長期

    間にわたり持続する。また、被災住民や被災した地方公共団体のニ

    ーズに丁寧に対応するとともに、関係機関、地方公共団体及び民間

    部門と適切に連携・協力し、人命救助、応急復旧、生活支援等を行

    う。

 (2)アジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善

   (略)

 2 自衛隊の体制整備に当たっての重視事項

 (1)基本的考え方

    自衛隊は、上記の防衛力の役割を実効的に果たし得る体制を保持す

   ることとし、体制の整備に当たって、今後の防衛力整備において特に

   重視すべき機能・能力を明らかにするため、想定される各種事態につ

   いて、統合運用の観点から能力評価を実施した。

    かかる能力評価の結果を踏まえ、南西地域の防衛態勢の強化を始め、

   各種事態における実効的な抑止及び対処を実現するための前提となる

   海上優勢及び航空優勢の確実な維持に向けた防衛力整備を優先するこ

   ととし、幅広い後方支援基盤の確立に配意しつつ、機動展開能力の整

   備も重視する。

   (略)

 (2)重視すべき機能・能力

   (略)

   ア 警戒監視能力

     各種事態への実効的な抑止及び対処を確保するため、無人装備も

    活用しつつ、我が国周辺海空域において航空機や艦艇等の目標に対

    する常続監視を広域にわたって実施するとともに、情勢の悪化に応

    じて態勢を柔軟に増強する。

   イ 情報機能

     各種事態等の兆候を早期に察知し迅速に対応するとともに、我が

    国周辺におけるものを始めとする中長期的な軍事動向等を踏まえた

    各種対応を行うため、情報の収集・処理体制及び収集した情報の分

    析・共有体制を強化する。

     この際、人的情報、公開情報、電波情報、画像情報等に関する収

    集機能及び無人機による常続監視機能の拡充を図るほか、画像・地

    図上において各種情報を融合して高度に活用するための地理空間情

    報機能の統合的強化、能力の高い情報収集・分析要員の統合的かつ

    体系的な確保・育成のための体制の確立等を図る。

   ウ 輸送能力

     迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保し、所要の部隊を機動的

    に展開・移動させるため、平素から民間輸送力との連携を図りつつ、

    海上輸送力及び航空輸送力を含め、統合輸送能力を強化する。その

    際、多様な輸送手段の特性に応じ、役割分担を明確にし、機能の重

    複の回避を図る。

   エ 指揮統制・情報通信能力

     全国の部隊を機動的かつ統合的に運用し得る指揮統制の体制を確

    立するため、各自衛隊の主要司令部に所要の陸・海・空の自衛官を

    相互に配置し、それぞれの知識及び経験の活用を可能とするととも

    に、陸上自衛隊の各方面隊を束ねる統一司令部の新設と各方面総監

    部の指揮・管理機能の効率化・合理化等により、陸上自衛隊の作戦

    基本部隊(師団・旅団)等の迅速・柔軟な全国的運用を可能とする。

    また、全国的運用を支えるための前提となる情報通信能力につい

    て、島嶼部における基盤通信網や各自衛隊間のデータリンク機能を

    始めとして、その充実・強化を図る。

   オ 島嶼部に対する攻撃への対応

     島嶼部への攻撃に対して実効的に対応するための前提となる海上

    優勢及び航空優勢を確実に維持するため、航空機や艦艇、ミサイル

    等による攻撃への対処能力を強化する。

     また、島嶼部に対する侵攻を可能な限り洋上において阻止するた

    めの統合的な能力を強化するとともに、島嶼への侵攻があった場合

    に速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力

    を新たに整備する。

     さらに、南西地域における事態生起時に自衛隊の部隊が迅速かつ

    継続的に対応できるよう、後方支援能力を向上させる。

   カ 弾道ミサイル攻撃への対応

     (略)

     また、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力

    の強化のため、我が国自身の抑止・対処能力の強化を図るよう、弾

    道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の

    上、必要な措置を講ずる。

   キ 宇宙空間及びサイバー空間における対応

     (略)

   ク 大規模災害等への対応

     南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害や原子力災害を始めとす

    る特殊災害といった各種の災害に際しては、発災の初期段階におけ

    る航空機等を活用した空中からの被害情報の収集、救助活動、応急

    復旧等の迅速な対応が死活的に重要であることを踏まえ、十分な規

    模の部隊を迅速に輸送・展開するとともに、統合運用を基本としつ

    つ、要員のローテーション態勢を整備することで、長期間にわたり、

    持続可能な対処態勢を構築する。

   ケ 国際平和協力活動等への対応

     (略)

 3 各自衛隊の体制

   各自衛隊の体制については、(1)から(3)までのとおり整備する

  こととする。また、将来の主要な編成、装備等の具体的規模については、

  別表のとおりとする。

 (1)陸上自衛隊

   ア 島嶼部に対する攻撃を始めとする各種事態に即応し、実効的かつ

    機動的に対処し得るよう、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動

    運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団、機動旅団及び機甲師団)

    を保持するほか、空挺、水陸両用作戦、特殊作戦、航空輸送、特殊

    武器防護及び国際平和協力活動等を有効に実施し得るよう、専門的

    機能を備えた機動運用部隊を保持する。

     (略)

     また、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部への部隊配備、

    上記の各種部隊の機動運用、海上自衛隊及び航空自衛隊との有機的

    な連携・ネットワーク化の確立等により、島嶼部における防衛態勢

    の充実・強化を図る。

   イ 島嶼部等に対する侵攻を可能な限り洋上において阻止し得るよ

    う、地対艦誘導弾部隊を保持する。

   ウ (3)エの地対空誘導弾部隊と連携し、作戦部隊及び重要地域の

    防空を有効に行い得るよう、地対空誘導弾部隊を保持する。

   エ (略)

 (2)海上自衛隊

   ア 常続監視や対潜戦等の各種作戦の効果的な遂行による周辺海

    域の防衛や海上交通の安全確保及び国際平和協力活動等を機動的に

    実施し得るよう、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパク

    ト化を両立させた新たな護衛艦等により増強された護衛艦部隊及び

    艦載回転翼哨戒機部隊を保持する。

     なお、当該護衛艦部隊は、(3)エの地対空誘導弾部隊とともに、

    弾道ミサイル攻撃から我が国を多層的に防護し得る機能を備えたイ

    ージス・システム搭載護衛艦を保持する。

   イ 水中における情報収集・警戒監視を平素から我が国周辺海域で広

    域にわたり実施するとともに、周辺海域の哨戒及び防衛を有効に行

    い得るよう、増強された潜水艦部隊を保持する。

   ウ 洋上における情報収集・警戒監視を平素から我が国周辺海域で広

    域にわたり実施するとともに、周辺海域の哨戒及び防衛を有効に行

    い得るよう、固定翼哨戒機部隊を保持する。

   エ (略)

 (3)航空自衛隊

   ア 我が国周辺のほぼ全空域を常時継続的に警戒監視するとともに、

    我が国に飛来する弾道ミサイルを探知・追尾し得る地上警戒管制レ

    ーダーを備えた警戒管制部隊のほか、グレーゾーンの事態等の情勢

    緊迫時において、長期間にわたり空中における警戒監視・管制を有

    効に行い得る増強された警戒航空部隊からなる航空警戒管制部隊を

    保持する。

   イ 戦闘機とその支援機能が一体となって我が国の防空等を総合的

    な態勢で行い得るよう、能力の高い戦闘機で増強された戦闘機部隊

    を保持する。また、戦闘機部隊、警戒航空部隊等が我が国周辺空域

    等で各種作戦を持続的に遂行し得るよう、増強された空中給油・輸

    送部隊を保持する。

   ウ 陸上部隊等の機動展開や国際平和協力活動等を効果的に実施し得

    るよう、航空輸送部隊を保持する。

   エ (1)ウの地対空誘導弾部隊と連携し、重要地域の防空を実施す

    るほか、(2)アのイージス・システム搭載護衛艦とともに、弾道ミ

    サイル攻撃から我が国を多層的に防護し得る機能を備えた地対空誘

    導弾部隊を保持する。

防衛力の能力発揮のための基盤

   (略)

 1 訓練・演習

   (略)

   自衛隊の演習場等に制約がある南西地域において、日米共同訓練・演

  習を含む適時・適切な訓練・演習を実施し得るよう、地元との関係に留

  意しつつ、米軍施設・区域の自衛隊による共同使用を進めること等によ

  り、良好な訓練環境を確保する。

 2 運用基盤

   部隊等が迅速に展開し、各種事態に効果的に対応し得るよう、その運

  用基盤である各種支援機能を維持する観点から、駐屯地・基地等の復旧

  能力を含めた抗たん性を高める。

   (略)

   民間空港及び港湾についても事態に応じて早期に自衛隊等の運用基

  盤として使用し得るよう、平素からの体制の在り方も含め、必要な検討

  を行う。

   (略)

   必要な弾薬を確保・備蓄するとともに、装備品の維持整備に万全を期

  すことにより、装備品の可動率の向上等、装備品の運用基盤の充実・強

  化を図る。

 3 人事教育

   (略)

 4 衛生

   (略)

 5 防衛生産・技術基盤

   (略)

 6 装備品の効率的な取得

   (略)

 7 研究開発

   (略)

 8 地域コミュニティーとの連携

   各種事態において自衛隊が的確に対処するため、地方公共団体、警

  察・消防機関等の関係機関との連携を一層強化する。こうした地方公共

  団体等との緊密な連携は、防衛施設の効果的な整備及び円滑な運営のみ

  ならず、自衛官の募集、再就職支援等の確保といった観点からも極めて

  重要である。

   このため、防衛施設の整備・運営のための防衛施設周辺対策事業を引

  き続き推進するとともに、平素から地方公共団体や地元住民に対し、防

  衛省・自衛隊の政策や活動に関する積極的な広報等の各種施策を行い、

  その理解及び協力の獲得に努める。

   地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・

  活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊の救難機等による急患輸送が

  地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐

  屯地・基地等の配置に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得

  られるよう、地域の特性に配慮する。同時に、駐屯地・基地等の運営に

  当たっては、地元経済への寄与に配慮する。

 9 情報発信の強化

   (略)

 10 知的基盤の強化

   (略)

 11 防衛省改革の推進

   (略)

留意事項

   (略)




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