魚突きの話
沖縄では電灯潜りという夜の魚突き漁が盛んで、石垣でもプロやアマチュアがたくさんやっています。
石垣の周りの海はサンゴ礁が全体に発達していて海の中の入り組んだ地形など良い魚突きポイントが沢山あります。
間違いやすいのですが伝統じゃなくて水中電灯を使う電灯潜りです。
それに対して昼間にもちろん電灯を使わずに魚突きをする人たちも少ないですがいます。
昼と夜では大きな違いがあって、プロは夜やる方が多いですね。
夜の魚突きには危険が多く伴います。
例えば曇りの日などは星で方角もつかめないし、街や道路のライトが見えない地域では回り中真っ暗になり遭難してしまいます。
だから海岸の目立つ所に点滅するビーコンを置いて帰る場所が分かるようにするんですが、
それが何かの陰になって見えなくなる事もあります。
さらに夜はダツという槍のように尖った魚がライトを見付けると突進して来てグサッと刺さって亡くなる方もいます。
ダツは海の表面にいるので電灯は絶対に平行にせずに斜め下を照らすようにすれば大丈夫です。
そして夜は何かあった時、助けを呼びづらいこともあり、特に初心者は熟練者と2人で作業するのが良いです。
夜と昼の違いは危険さだけではありません。
酒を飲んで夜に漁に出るのは危険極まりないので夜の漁に出る前は晩酌が出来ません。
これが私が夜から昼に転向した最大の理由です。
夜やる人たちは漁から帰って来て朝方にお酒を飲みます。
かと言って私が昼間酒を飲んで魚突きをしている訳ではありませんよ。
昼の漁でも夜ほどじゃないけれど危険は色々あるので潜る時は絶対に飲まないです。
昼と夜では魚の状態にも大きな違いがあることは想像付くだろうと思います。
夜寝ている魚は簡単に突く事が出来るけれど、昼間元気に泳いでいる魚は気付かれやすく突きづらいわけです。
逆に、夜魚たちが寝ているポイントを見付けるのは難しいけれど、昼は泳いでるのが見えるのですぐ見付けられます。
プロの海人の方たちは魚が多く寝ているポイントを沢山知っているので大漁が可能です。
昼は魚を見付けやすいけれど突くのに技術がいるので簡単に大漁は難しいわけです。
夜は一コロという魚の脳の部分を突いて即死させれば魚体に損傷なく確保出来るんですが、
昼間泳いでいる魚の一コロを狙って突くのはかなり技術が必要で、ボディーを突いちゃって売り物にならなくなる事も多いわけです。
まあ昼でも2時間ほどやれば5~6Kgくらいは取れるので売るんじゃなくて自給用なら十分ですけどね。
海の危険さえしっかり把握して対処していれば魚を自給するのはけっこう簡単ですよ。
釣りや投網という方法もありますしね。
魚突きをやるには突いた魚を運びながらやる必要があります。
ジンナーと言って水道の塩ビ管の両側に蓋をして浮き状にし、ひもを使って魚を吊るすような道具を作ります。
初心者ならお手軽に浮きを付けた網袋でもOKですが、大漁になるほど水の抵抗が大きくなって泳ぎづらくなります。
そのジンナーに自分が潜る深さ位のロープ(私の場合は12m位)を結んで、反対側を自分の腰のウエイトベルトに連結して引っ張りながら漁をします。
このロープが潜っている最中にサンゴに絡まって取れなくなってしまうと自分が浮上出来なくなり死んでしまうので
必ず水に浮くタイプのロープを使い、常に泳ぎながらロープの状態を気遣って潜ります。
昼の魚突きの基本は油断している単独の魚を見付ける事です。
スピーディーに泳いでいる魚は敏感になっているので追いかけません。
そして魚が沢山たむろしている場合突けそうに見えるけれど難しいです。
なぜかというとその中の1匹でもこっちに気付いたらさっとみんな一斉に逃げるからです。
魚がたむろしている状態は魚の数だけアンテナが張られているので気付かれやすいんですね。
油断している単独の魚を見付けたら後ろの方から近づいて手銛の射程内に入ったら頭の先を狙って突くと
うまくいけば頭に当たり魚体を傷つけずに確保出来ます。
あとオーバーハングしている岩の下とか魚が隠れていそうな場所を探して攻めたり、魚が良くいるポイントを把握しておいて
順番に自分がポイントを回遊しながら2~3時間突いて帰ってきます。
ちなみに水中銃はプロしか使っちゃいけないし私は手銛が好きなので手銛専門です。
この手銛も色んなものがあって話し出すと尽きないんですが、私の場合は色んなものを使ってみたところ、
漁場によってカーボンの2.5~3.2mの長さのものがベストですね。
銛先にも色んな種類があってそれぞれに特徴があるんですが、私はハワイでよく使われているパラライザーという3本で魚体を締め付けるタイプが手返しが良いのでよく使っています。
チョッキ銛先というのが大物を突くのに便利なんですが消耗がはげしいので最近は使っていないです。
魚突きは長時間泳ぐので体にとっても良い有酸素運動になっていて、かなりカロリーを消費する上に筋肉痛にもならないので、
ヘルシーな運動をしながら食料を確保できる一石二鳥の趣味と言えますね。
しかも石垣の海は暖かいので1年中出来ます。
でも海の作業っていうのはどんなものも命の危険が伴うのでかならず熟練者に習って下さいね。